1. 社会課題としての空き家問題
日本では、人口減少・高齢化・相続の複雑化などの影響により、空き家が急増しています。総務省の統計によれば、空き家数は900万戸に迫り、特に管理不全な空き家が地域の安全性・景観・地価に深刻な影響を与えるケースが増えています。
2. 特定空き家とは何か?
「特定空き家」とは、2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」において定義された、以下のような状態にある空き家です:
倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
著しく衛生上有害となるおそれのある状態
適切な管理が行われておらず、著しく景観を損なっている状態
周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態
このような空き家に対して、市町村は「特定空き家」に指定することができ、助言・指導・勧告・命令といった行政措置を講じることができます。また、命令に従わない場合には、強制代執行による解体や、固定資産税の住宅用地特例の解除なども行われる可能性があります。
3. 全国での指定状況と傾向
2023年度までに、全国で累計約4万件以上の空き家が何らかの行政措置(助言・指導・勧告・命令等)を受けており、うち約2万件が特定空き家に指定されたとされています。命令違反による強制代執行も年々増加しており、空き家問題は法的対応が本格化する段階に入っています。
特定空き家の指定により、住宅用地特例が外されることで固定資産税が最大6倍に上がることもあり、所有者にとっては大きな経済的負担になります。
4. 不動産会社が果たすべき役割
特定空き家は、地域にとって放置できないリスクであると同時に、不動産会社にとっては大きなチャンスでもあります。適切な査定・管理・活用提案によって、以下のような価値を創出できます。
行政との連携で所有者へ早期対応を促す
解体・更地化を支援し、再活用へと導く
地域住民の不安を解消し、信頼を得る
また、特定空き家の所有者にとっても、不動産会社からの明確な提案は「動くきっかけ」になります。助成金や税制優遇の情報を交えた提案は、行動促進に直結します。
5. 地域との共創によるアプローチ
空き家問題は、所有者個人の問題であると同時に、地域全体の問題です。そのため、解決には地域との連携が不可欠です。
・行政との連携:補助金や特区制度を活用し、空き家の利活用を推進
・ 地元企業との協働:リフォーム会社や解体業者との連携で円滑な再生
・ 地域住民の巻き込み:リノベーションイベントや空き家相談会を開催
6. 私たちの使命
不動産会社として、単なる仲介や買取ではなく「地域資源としての空き家の活用」を促進することこそが、これからの時代に求められる役割です。
地域に根差し、信頼関係を築くことによって:
空き家所有者の心理的ハードルを下げる
地域住民から空き家情報を得やすくなる
持続的な事業基盤が築ける
といった中長期的なメリットが生まれます。
7. 最後に
空き家問題は、行政・地域・企業が一体となって取り組むべき共通課題です。私たち不動産会社が「地域と歩むビジョン」を持つことで、単なる物件の売買にとどまらない、社会的価値のある仕事へと昇華させることができます。
今こそ、地域の未来に貢献する空き家活用の担い手として、私たちが立ち上がるときです。